5/9 「サッドティー」
今回も今泉力哉監督作品です。
・作品:サッドティー
・監督:今泉力哉
・公開年:2013年
・観賞日:2020年5月9日
<あらすじ>
カフェでバイトする棚子は既婚者の店長が好き。
そのカフェに頻繁に出入りする映画監督の柏木には同棲している彼女と
浮気している彼女がいて二股をかけている。
その同棲している彼女夕子の勤務先ネイルサロンの同僚夏は結婚間近であるが
夫となる人からDVを受けている。夏の学生時代の後輩園子は彼氏がいるが
元々柏木のことが好きで今も忘れられない。
園子の彼氏早稲田は園子の誕生日祝いに古着をプレゼントしようとするが
その古着屋の店員棚子(カフェを辞め古着屋スタッフとなった)にひと目惚れ。
柏木のもう浮気相手緑は夏の後輩でもあり柏木に彼女がいること
園子が好きだったことを知っている。
夏の結婚をきっかけにその結婚式で流すお祝いメッセージ映像を
後輩の園子と園子の彼氏早稲田が担当することになるのだが
編集を映画監督の柏木に手伝ってもらうことから登場人物の関係性が明らかになる。
結婚を控えた夏はある時自分が10年前に売れないアイドルをしていたことを
後輩の園子に告白。今も自分のことを思い続けているファンがいるため
もう自分のことを好きになるのはやめて、とそのファンに言いたいと
園子に相談するが、園子はそっとしておく方がファンにとって幸せですと
アドバイス。
そもそも夏がアイドルを引退したのは、
アイドル時代に自分が好きになったファンと海岸にて"大人になった"からだった。
夏が引退して以降、今も思い続けているファンは毎年その海岸に
花束を捧げているという。
その今も思い続けているファンは柏木の同級生朝日である。
近しい関係性の中で展開する「好き」の感情。
それぞれ異なる「好き」という気持ちへの向き合い方を通して
「好き」ってなんだっけを考えさせられるストーリーである。
<良かった点>
近しい関係性の中での展開という点では
先日観賞した「知らないふたり」に共通するものがあるが
「サッドティー」では「好き」の描き方に重点が置かれている。
一見すると柏木のような二股かけている男は最低な男である。
しかし柏木からすれば、拒む選択・別れる選択をして相手を悲しませることは
好きな相手にすることではないと思っている。
一方、彼女を思い続けていた早稲田やずっとファンの朝日はささいなきっかけで
別れをすぐに選択してしまうが、別れを選択しないと相手に失礼だと思っている。
上記は正反対な思いではあるが、相手のことを考えてという点では同じである。
世間では当事者ではなく、他人から見た「愛され具合」をものさしにして
愛の重さが語られることが多々あるがそれが正しいかと言えばそうではない。
ありふれたハッピーエンドのストーリーと一線を画しているが
かといってモヤモヤが残る訳ではない恋愛の描き方が今泉監督ならではで
良かった。
<悪かった点>
「なぜ好きなのか」という点はテーマではないからだと思うが
そこがないのもあり全体的にあっさりしすぎているかなと感じた。
それとも理由はあったとしても、結局全ては自分の一方的な気持ちでしかない、と
言いたいのか...
あとはトリプルファイヤーの劇伴がちょっと合ってないかなと。
サブカルロック感が強いけど、そんなに高まるシーンはなった気がする。
強いていうならラストシーンくらいか...